Step by step ワークライフコンサルタント日記

「怒り」は突然起こる?

2022年5月号掲載

 

「怒り」は、”あることをきっかけにして突然沸き起こるもの”と思いがちですが、実は違います。「怒り」は、二次感情と呼ばれ、もともとは別の一次感情があります。一次感情は、悲しみ、虚しさ、落ち込み、心配、不安といったネガティブな感情を指します。怒りは、こうした一次感情のあとに湧き上がってくるものとされています。怒りが突然に心の中に生まれるわけではないのです。

例えば自分の意見が相手に受け入れられなかった場合、突然、怒りが沸き起こってくることはありません。せっかく意見したのに聞いてもらえない「悲しさ」、または受け入れて貰えない「虚しさ」、また、子どもが門限を守らなかった場合、帰宅途中で交通事故に遭ったのではないかという「不安」や「心配」。最初はそういう感情だったものが、上手く処理できなかったときに「怒り」に変換されるのです。

そのため、イライラの背景にどんな一次感情が存在するのかを分析することが、イライラの対処法です。そして、自分の本来の気持ちである一次感情を相手に伝えることの方が、相手も「怒り」よりも受け入れやすくなるのです。その際は「私」を主語にすると伝わりやすくなります。「私は、意見を聞いてもらえなかったことが悲しかった」「お母さんは、あなたの帰宅が遅くてとても心配だった」などです。

また、「~すべき」「~であるべき」という考え方が強いと怒りの気持ちが大きくなります。どういうことにあなたは「~すべき」と考えますか?「~すべき」と特に意識してなくても「そうであることが当たり前だ」ということはありませんか?

「べき思考」を書き出してみて、本当にそれが譲ることができないほどに大切なものなのかどうかを分析してみましょう。物事に対する許容範囲が自分の中で広がれば、イライラする気持ちは和らぎますし、他人に対してついつい厳しく言ってしまうということも少なくなります。

まずは怒っている時に「あー、自分は今怒っている」という意識を持つことです。そして「なぜ自分は怒っているのだろう」→「子どもの帰宅が遅いから」→「なぜ帰宅が遅いと怒るのだろう」または、「なぜ遅いとこういう気持ちになるのだろう」→「この気持ちは遅いことを心配しているのか」というように自問自答して気持ちを遡ってみてください。「なぜ」と、問いかけることで考える時間が生まれ、自分を客観視できて本来の自分の感情に気づくことができます。そして、自分の感情に気づくことは、相手を許容できることにも繋がります。ぜひ自問自答して、今まで意識していなかった自分の感情を紐解いてみてください。

さて、大人が思う不安と、子どもが思う不安。同じ不安でも捉え方は異なりますが、何が異なると思いますか?

次回は「不安」に注目してお伝えします。