2022年11月号掲載
心理学者のアドラーが「全ての悩みの原因は対人関係である」と言うほど、人間関係はストレスに大きく影響します。自分の発言に相手はどう思うか、面倒くさく思われないだろうかなど、特に「お願いごと」をする時は、思い悩むのではないかと思います。
その際の考え方のポイントは、「お願いする」という「目的」に向かって動く、ということです。そうすれば、「これを言ったら相手がどう思うか」という悩みは軽減されます。なぜでしょう。それは、相手がどう思うかは目的ではないからです。もちろん相手への気遣いや配慮は必要ですが、目的を達成させるために添えるものとして考えるのが良いでしょう。
そこで、相談を分解して考えてみます。少しの工夫で「相手への配慮」と「目的達成」という合わせ技を使うことで、その悩みが軽減されます。例をご覧ください。
事例)中学生の息子の体育の授業について、担任と一度相談がしたい。ただ、担任は野球部の顧問もしていて朝練や夕練もあるため、連絡のタイミングがよくわからない。多忙な先生に、息子の相談をするための時間をわざわざ作ってもらうのは悪い気がしてどうも気が引けてしまう。
この事例の目的は「相談がしたい」ですが、担任に対して遠慮があるため、その目的が達成されないという状況です。さらに、「我が子のために時間を作ってもらう」ことに不安も伺え、これにより余計に電話しずらくなっていると考えます。この遠慮と不安は、どうしたら払拭できるでしょうか。それは、次のように分けて考えると整理できます。①「体育の授業について相談したい」②「連絡のタイミング」③「我が子のためということに遠慮がある」という3つです。この中で最優先するのは①です。この目的を達成することを踏まえると、次のような連絡になります。
「体育の授業について相談をしたいのですが、先生のご都合がよい日時を教えてください。」
このように、①②③を一度に考えるのではなく、最優先すべきことをまず伝えます。そしてその時に、「ご都合の良い日時を教えてください」と添えれば相手から返事がもらえます(②)。これにより、本来の目的が達成され、かつ相手への配慮も達成できるという「合わせ技」です。
では、③はどうしたらよいでしょう。先生は、生徒のことを把握しておく必要があります。無理なお願いや身勝手なことをお願いするわけではなく、体育の授業で気をつけてほしいという親の相談は、大事な情報源です。これは「子どもが学校生活を豊かに送れること」、または「学校との風通しをよくしておく」が目的になるのではないでしょうか。目的が見えれば遠慮は軽減され、何をすべきなのかがわかるでしょう。
このように、自分の考えを一度に解決しようとすると身動きがとれなくなるので、まず最優先すべきことを目的にして行動すると良いと思います。特に、学校生活では事例のようなことが多々あります。そういうときに、相手へ配慮しながらも自分の目的を達成する、合わせ技を使って交渉をしてみると良いでしょう。